NDKCOM エンジニアブログ

Evolution for 'NDKCOM software Quality improvement'

SS2023 in 仙台に参加しました

こんにちは。NDKCOM の濱﨑です。
ちょっと前の 6/12 - 6/14 に開催されたソフトウェア・シンポジウム 2023 in 仙台に参加しましたので、その報告をしておきます。

 

ソフトウェア・シンポジウム(SS)

ソフトウェア・シンポジウム (SS) は,ソフトウェア技術に関わるさまざまな人びと,技術者,研究者,教育者,学生などが一堂に集い,発表や議論を通じて互いの経験や成果を共有することを目的に,毎年全国各地で開催していますここの冒頭から抜粋)

SS は、上記の通り、ソフトウェア技術に関する色々な人たちが集まるカンファレンスです。今回で 43 回目(!)の開催なのだそうです。第 1 回目が 1980 年末だったそうなので、43 年前から毎年開催されているということになります(すごい歴史)。ちなみに来年 2024 年は我らが地元、長崎で開催されます

 

参加のきっかけ

2022 年 9 月に発足した社内プロジェクトである ENQi プロジェクトでは、改革のためにやるべき項目をリストアップして実行しています。その項目の中に「社外交流」というものがあります。「社外交流」には色々な狙いがありますが、一番の目的は、社内に閉じこもって外への関心を失ってしまう「タコツボ化」を解消することです。社外交流の一環として、要所要所でオンラインカンファレンスには参加するようになってきましたが、開催現地でのカンファレンス参加は未経験でした。そろそろ現地参加してみようという雰囲気に加え、技術顧問の池田暁さんから現地参加を提案頂いていたことが後押しとなって、今回ソフトウェア・シンポジウムに現地参加することとなりました。

 

論文の投稿 (Future Presentation)

せっかく仙台まで行くので、聴講者としてだけではなく発表者としても参加しよう、とプロジェクト内で盛り上がったこともあり、論文投稿に挑戦しました。結果、採録され発表してきました

本当は ENQi プロジェクトのメインテーマである、ソフトウェアテストに関する内容で論文を投稿したかったのですが、論文にできるほどのネタがまだ無かったので、それは断念しました。代わりに、私が以前からやっていた文章類似検索のネタで Future Presentation (FP) に投稿することにしました。正直、ダメ元での投稿でした。ですが、何事も挑戦しないと始まりません(サンボマスターも「できっこないを やらなくちゃ」と言っています)。投稿したことで、たくさん得るものがあったと思います。論文の作成は大変でしたが、採録という結果も得られ、挑戦して良かったな、と思っています。

 

以下、3日間の感想です。

 

1日目

仙台国際センター

写真は、会場である仙台国際センター展示棟の入り口です。仙台国際センターは観光名所仙台城跡の麓にあります。

 

正直に言いますと、1日目のカンファレンスの内容はあまり覚えていません。なぜかというと、1日目に自分の発表 (FP) があったからです。とにかく緊張してました。

FP は「発表時間 5 分、質疑応答 20 分」となっており、議論がメインなのですが、この「発表時間 5 分」というのが、かなり難しかった。たった 5 分だから、まあなんとかなるだろう、とか思っていると痛い目に遭います(実際遭いました)。5 分間で、聴衆に議論をしてもらえる程度に話す内容をまとめるというは、思った以上に大変な作業でした。次に論文投稿するときは 20 分発表のものにしたいと思っています。

質疑応答では、そもそもの研究意義を問われるような厳しい質問や、自然言語処理専門の方ならではの有意義なご指摘など、4、5 個の質疑をして頂きました。質疑してくださった皆様、本当にありがとうございました。

カンファレンス1日目の夜は情報交換会がありました。NDKCOM では JSTQB の資格取得に力を入れているのですが、その JSTQBシラバス翻訳者の方とお話しできる機会に恵まれました。名刺もたくさん配ってきました。

 

2日目

WG で使った机と椅子とホワイトボード

写真は、WG で使用したスペースの写真です。2日目の午後と3日目の午前まで、ここでフォーマルインスペクションについて学ばせて頂きました。

2日目は、今回ソフトウエアシンポジウムに参加して良かった、と思えるようなことが集中していた日でした。

まずは、今回 (SS2023) の最優秀論文賞に選ばれた経験論文「テストからはじめよ」~忍者式テスト20年の実践から~ の発表ですが、これがとても面白かったです。キヤノンメディカルシステムズ株式会社の発表者が所属するチームは、 20 年(!)に渡って忍者式テストを実践しているのですが、その詳細ついてのお話です。「ストーリーが増えるたびに、それまで作った全てのストーリーの受け入れテストを手動でやり直す」その根拠と実践するための工夫について、分かりやすく説明して下さいました。本当にすごいチームだと思いました。

午後からは、マネーフォワードさん所属のエンジニアの方がリーダーをされた WG「レビューの基本に立ち返り、今とこれからのレビューを再考する」に参加させて頂きました。このWG は、フォーマルインスペクションを参加者全員で実際に体験するという内容でした。インスペクションは遠い世界の話で実際に体験する機会などないだろうな、と思っていたので、この WG に参加できて大変光栄でした。実際にフォーマルインスペクションを体験してみると、欠陥を見つけるのに効果的なレビューだと思うことができ、とても有意義な時間だったと思います。マネーフォワードの原さん、亀井さん、貴重な体験ありがとうございました。

 

3日目

仙台城跡から見下ろす風景

写真は、カンファレンス終了後に行った仙台城跡から見下ろす風景の写真です。ちょっと天気が悪いのが残念です。中央左にカンファレンス会場である仙台国際センターが見えています。

 

3日目は、WG の続きと、基調講演の2つがありました。

基調講演は「Planetary Locomotion ー流体力を利用した新しい惑星探査手段の提案ー」という題目で、会社に閉じこもっていたら絶対に聞くことがないであろう、お話です。

火星探査をするには、ビーグル(車型のロボット)ではなく飛行体を使用することで探査範囲が劇的に広がります。それなら飛行体で探査したいのですが、地球なら上手く飛ぶ飛行体でも火星では上手く飛ばないのだそうです。その理由は以下の揚力の式

 L = \dfrac{1}{2} \times \rho_{\infty} \times V_{\infty}^{2} \times S \times C_{L}

にあります。ここで、 \rho_{\infty} は大気の密度、 V_{\infty} は飛行体の速度、 S は飛行体の翼の面積、 C_{L} は翼の性能に関する係数(揚力係数)です。飛行体を飛ばすには、揚力  L を大きくしないといけないのですが、火星は大気が薄いため  \rho_{\infty} が小さく、結果、地球と同じ飛行体では揚力  L が小さくなって上手く飛ばないのだそうです。そこで、揚力を大きくするべく策を講じなければならないのですが、 \rho_{\infty} は火星に行くと自動的に与えられる値で修正のしようが無く、  V_{\infty} もそんなに調整できないそうです。なので、 S C_{L} を大きくすることになるのですが、翼の面積  S を大きくしても、そんな大きな翼をどうやって火星に持っていくのか、という問題があります。ということで、残った翼の性能  C_{L} を大きくすることに注力することになります。

講演では、この翼の性能  C_{L} を大きくするために、昆虫の羽 (たしかトンボだった) をヒントに、GA (遺伝的アルゴリズム) を使って性能のよい翼を設計しているというお話がありました。人が考えたのではそんな形には出来ないだろうな、という翼の形状が得られていて大変興味深いお話でした

 

終わりに

文章の中で太字にした部分は「社内に閉じこもっていたのでは得られないもの」だと個人的に感じたものです。こんな感じで、外に出て社外の人と交流することで、いろんな刺激や体験が得られました。ソフトウエアシンポジウムに参加して本当に良かったな、と思っています。皆さん、来年は長崎で開催されますので是非参加しましょう。

なお、発表したスライドは公開する予定です。公開したらこのブログで報告します。

 

おまけ

仙台から福岡までは下の写真の飛行機を利用したのですが、飛行機が想像より小さくて本当に福岡まで飛ぶのか不安になりました(問題なく飛びました)。

小っちゃい飛行機

 

おまけ(8月8日追記)

発表時の写真を撮っていただいていました(ありがとうございます!)。写真は会社のお知らせに掲載してもらっていますが(「論文の投稿 (Future Presentation)」に貼ってあるリンク先参照)、こちらにも発表時の写真を掲載しておきます。

発表時(カメラ目線)

発表時アップ(下向いてる)

発表時(耳の後ろを掻いてる)

以上です。